新潮社
発売日:2001-08-01

中学生のまいは、祖母が死んだと聞かされ、母の車に乗って祖母の住んでいる田舎に向かう。

車中でまいは、2年前に祖母と暮らした日々を思い出していた。

中学校に入ったばかりのまいは、登校拒否になり、自宅に引きこもっていた。

まいを心配した母親は、田舎に住むまいの祖母のところに、しばらくまいを預けることにした。

祖母は外国人の血を引いており、普段から自分のことを「魔女の血統を引く」とまいにいっていたので、まいは祖母を「西の魔女」と呼んでいた。

祖母の家に着いたまいは、早速その日から「魔女修行」を始める。

祖母のいう「魔女修行」とは、毎日決まった時間に食事をし、決まった時間に起き、決まった時間に寝ること。

そして、自分のことは自分で決め、一度決めたらやり通すということ。

まいが不登校になったのは、夜更かし朝寝坊を繰り返すという、生活習慣の乱れが原因だった。

夜更かし朝寝坊は、まいの持病だったぜんそくの悪化を引き起こした。

まいが「西の魔女」のもとにやってきたのは、祖母にまいの乱れた生活習慣を立て直して欲しいという願いもあったのである。

祖母はまいに「精神力をつけなければならない」という。彼女のいう「精神力」とは、正しい方向をきちんとキャッチするアンテナをしっかりと立てて、身体と心がしっかり受け止めるということ。

「座禅を組んだり迷走をしたりしないの?」

という質問に対して

「いきなりバットを振って肩を脱臼するようなもの」

と諭す祖母。

自宅の掃除をし、洗濯を手伝い、鶏の世話をし、ジャムを作り、畑でとれた新鮮な食べ物を食べる。

「西の魔女」が口にするこれらの「修行」を忠実に実行するまい。

「スローライフ」と「地産地消」を地でいくような生活のおかげで、まいは、心身共に健康を回復していく。

しかし、近所に住む男の存在が原因で、まいと祖母の間にわだかまりが生じる。

きっかけは、可愛がっていた鶏が食い殺されたこと。

その男が飼っている犬が犯人だというまいに対し、祖母はそれを否定する。

二人は激しく口論し、激高した祖母はまいに手を挙げてしまう。

以後、まいは祖母に対してわだかまりを持つようになる。

だが、それはまいの誤解だったことがわかり…====

この本で描かれる世界は「田舎暮らしのすばらしさ」。

現代人は疲れている。

食べ物は、得体の知れない物質が多数含まれている。

学校生活も、子供にとってはストレスにつながる。まいが祖母に学校内における女子生徒との交友関係の難しさを語る場面があるが、その場面は現実の学校生活をありのまま描写したものである。

先ほど書いたとおり、まいは祖母の住む田舎で暮らすことで、心身の健康を取り戻していく。しかし、この本では「田舎暮らし」を必要以上に賛美しすぎているような気がする。田舎には田舎ならではのルールや価値観があるし、どんな人でも馴染めるわけではない。まいと祖母の諍いは、都会人と地方在住者の価値観の違いが背景にあると思う。

また、この本で示される「死生観」はユニークである。

祖母は「魔女は、十分に生きるために死ぬ練習をしている」という。そして魂の本質は「成長すること」とまいに説く。まるで禅問答をしているようで、簡単に理解できないのだが、何度も読み返すうちに理解できるだろうか。

この本は児童書として出版されたが、書かれていることは「児童」にはわかりにくいところもある。

しかし大人が読めば、この本は「哲学書」「人生読本」になるし、しつけの本、家庭教育の本としてもとらえることができるという、ユニークな本である。

「アイ・ノウ(わかってますよ)」。

祖母がまいに言う言葉には、孫に対する深い愛情がにじみ出ている。

モノがあれば、子供は幸せになるわけではない。

愛情がなければ、子供は幸せにならない。

祖母のまいに対する態度は、子育てに悩む人にひとつのヒントを与えてくれるだろう。

悲しくなった時。

つらくなった時。

そんなときにこの本を読めば、「西の魔女」はあなたににっこり笑っていうだろう。

「アイ・ノウ」

と。

P.S

この本を見て「園芸やってみたい

「田舎暮らししてみたい」

と思う人は、絶対いそうな気がする…

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