「2016年1月の読書リスト」

あ・あ・あ……や〜れやれ、という感じである。

TPP推進など、安倍内閣の経済政策の司令塔として動いていた甘利明・内閣府特命担当大臣が、不祥事で大臣辞任に追い込まれた。不祥事の規模からいっても、これまでだったら内閣総辞職レベル、それでなくても衆議院を解散してもおかしくないほどの大スキャンダルなのに、なぜか「内閣支持率」の数字が上がっているというのだから、本当にわけがわからない。国民は、本当にこの政権の政策を支持しているのだろうか?それとも夜ごと安倍と会食している「大メディア」幹部の以降を、現場の記者が忖度した結果なのだろうか?前者だったら、戦後70周年書けて政府が施してきた愚民化政策の成果であり、後者だとしたら、メディアの堕落腐敗ぶりもここまで来たのか、と嘆息せずにいられなくなる。

それでは野党や市民運動サイドはどうなのか…というと「頭にくる」を通り越し、ただただ絶句するのみである。

野党五党(民主・維新の会・生活・共産・社民。もちろん「おおさか維新の会」は野党じゃないからね)は、この夏に行われる参議院選挙で「野党統一候補」を擁立して、安倍政権に対抗するといっている。だがその中心となるべく民主党の姿勢が、いつまでたっても定まらない。参議院選の最大のテーマは、誰がどう見ても「改憲」「反原発」のはずである。ところが新潟では、一度「野党統一候補」を建てるつもりで動いてはずの民主党が、態度を一転して自党から候補を擁立することを決めてしまった。その背景には、原発再稼働に固執する電力労連の意向を受けた「連合」が、脱原発を公約に掲げる候補者の支援を拒否したからだ。心ある一は安倍総理を「KY」というが、本当の「KY」はこいつsらなのでは?と思ってしまう。

そして市民運動の側を見たら、こちらも「何だかな〜_| ̄|○」と、こちらの気持ちが萎えてしまいそうな記事を見てしまった。

こちらの記事では瀬戸内寂聴とSEALDsのメンバーが対談しているが、どう見ても彼らには弱者に寄り添う姿勢が見えてこない。

「自分たちは社会に役に立つ活動をしていまーす!うふふっ」

という雰囲気漂うこの対談、瀬戸内寂聴はしきりに恋愛を話題にしているけれど、貧乏な男性にとっては戦争があろうとなかろうと、恋愛する権利も余裕もないのだよ。彼女たちには、自分たちよりも生活レベルも知性も低い男性のことなんか、おおよそ眼中にないだろう。安倍内閣の支持率がなかなか下がらないのも、低学歴層がインテリ層に対する恨み辛みを、安倍政権が晴らしてくれると思っているからに違いない。彼らにとっては「反戦」よりも「バカにされてきた自分たちの自尊心を回復すること」を優先するのだろう。

さて、先月読んだ本の紹介。

先月はそうでもないが、ここ最近は経済や自然科学、そして哲学に関心がある。来月以降は、これらの分野の本を紹介することが多くなるだろう、と宣言しておく。

生きさせろ! 難民化する若者たち生きさせろ! 難民化する若者たち

読了日:1月1日 著者:雨宮処凛
時空(とき)の旅人―とらえられたスクールバス〈中編〉 (ハルキ文庫)時空(とき)の旅人―とらえられたスクールバス〈中編〉 (ハルキ文庫

読了日:1月3日 著者:眉村卓
戦争に強くなる本 入門・太平洋戦争―どの本を読み、どんな知識を身につけるべきか戦争に強くなる本 入門・太平洋戦争―どの本を読み、どんな知識を身につけるべきか

読了日:1月9日 著者:林信吾
紛争の心理学―融合の炎のワーク (講談社現代新書)紛争の心理学―融合の炎のワーク (講談社現代新書)

読了日:1月13日 著者:アーノルドミンデル
セックスと恋愛の経済学: 超名門ブリティッシュ・コロンビア大学講師の人気授業セックスと恋愛の経済学: 超名門ブリティッシュ・コロンビア大学講師の人気授業

読了日:1月14日 著者:マリナアドシェイド
恋よりブタカン!: 池谷美咲の演劇部日誌 (新潮文庫nex)恋よりブタカン!: 池谷美咲の演劇部日誌 (新潮文庫nex)

読了日:1月20日 著者:青柳碧人
モア・リポートNOW〈3〉からだと性の大百科 (集英社文庫)モア・リポートNOW〈3〉からだと性の大百科 (集英社文庫)

読了日:1月25日 著者:モアリポート班
ちはやふる(30) (BE LOVE KC)ちはやふる(30) (BE LOVE KC)

読了日:1月26日 著者:末次由紀
時空(とき)の旅人―とらえられたスクールバス〈後編〉 (ハルキ文庫)時空(とき)の旅人―とらえられたスクールバス〈後編〉 (ハルキ文庫)

読了日:1月30日 著者:眉村卓
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生きさせろ!難民化する若者たち

リストに登録していると思っていたけど、登録していなかったので改めて登録する。よって、今年最初にに読了した本でないことを、あらかじめお断りしておく。

今から9年前に発行され、後に文庫化(ちくま文庫)されたが、今の雇用情勢は当時より悪化している。本書では「労基署は何もやってくれない」と訴えているが、今や労基署の窓口で失業者に対応する職員も、そのほとんどが「非正規社員」である。安倍政権は発足以来、国会で「自民党政権になって以来、雇用情勢は回復している」と強調するが、雇用が増えているのは「非正規社員」であり「正社員」は減少傾向が止まらない。工場の多くが非正規社員になったことで、日本企業の技術力は完全に失われた。

とある投資家が「日刊ゲンダイ」に執筆しているコラムで

「スーパーの『ダイエー』が凋落したのは、人件費を削ったからだ。パート社員が売り場の主力を占めていたのに、彼ら彼女らの勤務時間を削ったために、彼らは一斉に退職した。結果として売り場が荒れ、それが業績低迷につながった」

と書いていたが、その通りだと思う。正当な仕事に見合う真っ当な評価を下す経営者が増加しない限り、日本経済の復活はありえないと思うのは、私だけではあるまい。

時空(とき)の旅人-とらえられたスクールバスー

(中巻)

この本も登録が今月になっただけで、年末ギリギリに読了している。

本作は、‘70~’80年代にかけて一世を風靡したSF作家・眉村卓の作品の一つである。

スクールバスを乗っ取った少年曰く「性能の悪い」タイムマシンをつけたスクールバスは、昭和15年で特高警察にマークされている大学助教授が新たにメンバーに加わり、幕末動乱期→関ヶ原の戦いを経て、少年が目指す戦国時代に到着した。そして、じょじょに明らかになる「時間管理局」の実態。管理局員の本当の狙いは、少年の追跡以外に何か目的あるのではないか?と思わせる描写があちこちにちりばめられている。そして彼らが到着したのは、日本人なら誰でも知っているはずの歴史的大事件だった。彼らは時間をさかのぼる途中でとある武士と知り合い、その時代まで一緒に同行することになるが、彼の狙いはこの大事件を阻止することにあった…。

「戦争に強くなる本 入門・太平洋戦争―どの本を読み、どんな知識を身につけるべきか」

ひょっとして「この本も、リストに入れていなかっただけだろう?」と突っ込む来訪者のみなさんへ。はいそうです。この本も、リストに入れてませんでした_(_^_)_

この記事にもあるとおり、本書では小林よしのりをクソミソに貶している。それでは当の本人は反省しているのかというと…このブログ記事を見る限り、どうもそのようには見えない。彼がそもそも安倍政権がしゃかりきになって制定した「安保法制」に反対したのは「英米と一緒になって侵略戦争に加担するのがイヤ」なのであって、戦争そのものを否定しているわけではなさそうだ。北朝鮮が核武装に固執しているのは、あえてここではいわないでおく。だがその視点が小林だけでなく、安倍政権や「安全保障専門家」から窺えないのはどうしてか?安倍晋三は北朝鮮問題について聞かれる度に、なんとかの一つ覚えのように「対話と圧力」と答える。しかし端から見ると、この政権は北朝鮮と一戦交えたいという狙いがミエミエで、考えるだに怖ろしくなる。ミサイルを発射し、狙い通りに北朝鮮の政権が崩壊したとしよう。だがその結果何が起こるのか?その視点がまるでないのが一番怖いのだ。

紛争の心理学ー融合の炎のワーク

ここから、今年読了した本になる。

この本は「心理学」というタイトルがついてはいるが、本書で取り上げられている内容は、従来の「心理学」だけではなく、社会学・政治学・人類学・文化学・ジェンダーなど複数の視点を持たない読者には、理解するのは困難である。本書が発行された時期が、あの忌まわしい事件「9.11」直後ということもあり、書店でこの本を手にとってページをめくったり、興味を持って購入した人も多いだろう。私もその一人である。

彼は本書では繰り返し「対立が厳しい世界こそ対話が必要だ」と説く。彼は世間で「テロリスト」と呼ばれている人たちについて「社会で抑圧されている人々」と表現し、彼らから「敵」と認定されている我々は、彼らから見れば強い立場にある人間である事を忘れてはならないと主張する・そして対話を主導する立場にある人も、強い立場にある事を忘れてはいけないのだと述べる。おそらく世界中でテロ事件を起こしている「イスラム国(IS)」も、おそらく「自分たち以外の人間はみんな敵だ」という論理で行動しているのだろう。彼らとの対話が成立するのかは、はっきり言ってわからない。だからこそ彼らみたいな人間を、本気で対話の席に引っ張り出す手段を考えるべきなのだ。報復爆撃だけでは、この争いが終わることはないだろう。

セックスと恋愛の経済学

経済学の理論を用いて「SEX」と「恋愛」行動について読み解こうという、野心的な経済学の本。日本では「草食男子」「肉食女子」という概念が定着して久しいが、海の向こうでもそうだったのね。そして、男子に一定の経済力を求めるのも万国共通なのね。私みたいな「中年フリーター」は、読んでいて精神が鬱状態になってしまったわい。恋愛傾向が人種によって大きく違うのは「ああ、やっぱりね」と思ってしまう。経済力が高い階層ほどいい教育を受けられ、低ければ低いほど、まともかつ真っ当な教育を受ける機会が低い現実を、この本でもイヤというほど認識させられる。だが残念ながら、この本では「貧乏な人間が、どうやって恋愛を楽しめばいいのか」という視点では書かれていない。貧乏人は恋愛を楽しむな、ということなのだろうか。

恋よりブタカン~池谷美咲の演劇部日誌~

「浜村渚の計算ノートシリーズ」でおなじみの青柳碧人による新シリーズの2冊目。なぜ2冊目を紹介するのかというと、ただ単に1冊目が地元の書店で手に入らなかっただけ。「GOSICK」(桜庭一樹)の大ヒット以降、ミステリー×ラノベの分野にまたがる作品が多数見られるようになったが、本作もその流れを汲む一つである。本作の舞台は高校の演劇部、この設定は大ベストセラー「幕が上がる」を意識したものだろうか?作中においてふんだんに演劇用語をちりばめているが、その割に心の中に響いてこないのはどういうわけか?肝心のミステリーの推理も、どこか唐突感が否めないんだよな。それなりに伏線をはってはいるけれどね。

モア・リポートNow(3)からだと性の大百科

モアリポートNow三分冊の最終刊。先に刊行された二巻が「社会学」的な雰囲気を持っているのに対し、こちらは入門者向けの医学書という雰囲気を持っている。生理のメカニズムとリズム、妊娠、中絶、そして性病のこと。女性ですら先記のことをよくわかっていないのだから、異性である男性はなおさらだろう。「性病」の項目で、AIDSについて詳述しているところに時代性(本巻の刊行は1987年)を感じる。今でこそエイズとのつきあい方が判明しているが、この時代は「死に至る病」と認識されていたのだ。後半に収録されている、女性特有の悩みに専門家が回答する項目では、人によっては「上から目線だ」と感じる人も多いだろう。書籍版刊行から約30年経過したが、女性が抱えている問題も、そして彼女らが抱える理解しようという姿勢を見せない男性が相変わらず多いという事実を、男性は同理解したらいいのか?とはいえ恋愛に興味を示さない(したくてもできない)男性にとっては、これらの問題は他人事としか感じないだろう。

ちはやふる(30)

2016年初のコミック。

今春に「上の句」「下の句」の二本立てで映画化される本作も、いよいよ30の大台に到達した。真冬であるにもかかわらず、真夏に開催されるイベントのことについて書かれた作品を読むことに違和感を覚えるというヤボはいいっこなし。高3になる千早たちにとって、今度の大会が仲間たちと迎える最後の大会。千早の顔には、自分たちが後輩たちのために道を切り開くんだという意気込みや、本来ならいるべき人間がそばにいない寂しげな表情が垣間見える。そして本巻は「かるた=文化系」であるというイメージを見事にぶち壊してくれる場。「競技」という二文字がつくだけあり、そのトレーニング内容は運動部顔負けのメニューがてんこ盛り。そして迎えた準決勝。その結末やいかに?

時空(とき)の旅人-とらえられたスクールバスー

(下巻)

ハラハラドキドキの展開が続いていたこの物語も、この巻をもってめでたく決着。このままだと、大事件として語り継がれるはずの出来事が「なかったこと」にされてしまう。それを避けるべく東奔西走する主人公たちだが、思わぬ自体が彼らを待っていた。「事件が起きなかった」時間軸から「時間管理局」メンバーに襲撃され、彼らは窮地に陥る。命からがら逃げ回る彼らに、思わぬところから救いの手が差し伸べられる。交錯する時間軸の前に混乱するメンバー。事件は解決するが、時間軸がずれたことで、彼らが負われる原因となった人間が「いなかった」ことになる。そしてやってくる別れの時。戦国時代に残ったメンバーが、その後どんな人生を送ったかはあえて明記されないが、その選択に後悔はないということを信じたい。現代に無事帰還したメンバーは、現代だったらネットで袋だたきに遭うだろう。作者が今同じテーマを取り上げたら、たぶん結末は違っていただろう。

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「2015年11月の読書リスト」

あああ、今年も終わってしまう。

生活が楽になる見通しもない。もちろん、私みたいな生活力に乏しい「中年男子フリーター」みたいな人間に恋を囁く、奇特なオンナもありゃしない。

遊びたくても、オシャレをしたくても、はたまた諸々の活動をしたくても、先立つものがなければできないものである。

いやいや、仮に先立つものがあったとしても「頭が悪い」「いい年こいた人間である」というだけで、NGOだのいろんな活動から爪弾きされる人間は存在する。

SEALDsはじめいろんな「ワカモノ団体」が活動をしているが、彼らが「仲間」と認めているのは、自分と同世代の人間か、あるいは自分と同等、それ以上の能力を持っている人間だけである。これらの活動に興味を持っている人にご忠告。あまり能力がないのにこれらの活動に関わっても、ちっとも面白くない。意見を言っても他の会員からバカにされるのがオチだし、最悪会費だけ取られて、意見はまるで通らない、ということも大いにあり得る。

そんな私は、今年のクリスマスも「シングルベルで苦しみます」確定である。

さて、今月読んだ本の紹介。

コミックを1冊も読まなかったのはこれまであったかな?記憶にないのだが……

 

小澤征爾さんと、音楽について話をする (新潮文庫)小澤征爾さんと、音楽について話をする (新潮文庫)

読了日:11月11日 著者:小澤征爾,村上春樹
モア・リポートNOW〈1〉性を語る 33人の女性の現実 (集英社文庫)モア・リポートNOW〈1〉性を語る 33人の女性の現実 (集英社文庫)

読了日:11月12日 著者:
経済学がわかる。 (アエラムック (1))経済学がわかる。 (アエラムック (1))

読了日:11月19日 著者:
声優魂 (星海社新書)声優魂 (星海社新書)

読了日:11月20日 著者:大塚明夫
時空(とき)の旅人―とらえられたスクールバス〈前編〉 (ハルキ文庫)時空(とき)の旅人―とらえられたスクールバス〈前編〉 (ハルキ文庫)

読了日:11月26日 著者:眉村卓
モア・リポートNOW〈2〉女と男 愛とセックスの関係 (集英社文庫)モア・リポートNOW〈2〉女と男 愛とセックスの関係 (集英社文庫)

読了日:11月28日 著者:

小澤征爾さんと、音楽について話をする

小澤征爾と村上春樹という、クラシック音楽と文壇の巨人による対談集。「マーラー」「オペラ」「バーンスタイン」「グレン・グールド」というテーマについて、二人は縦横無尽に語り尽くす。あるときはレコードを聴きながら、あるときは村上の仕事場で。この二人にとって、バーンスタインの存在は大きいようだ。小澤征爾の若手音楽家に接する姿勢やリハーサルの仕方は、ほとんどバーンスタインのやり方をまねていると言っていいだろう。文庫化にあたり、日本を代表するジャズ・ピアニスト大西順子が、小澤指揮のサイトウ・キネン・オーケストラと2013年9月に共演したときの顛末が追加収録されている。 大西はこの公演の直前に引退を表明し。音楽とは関係ない仕事に就くことが決まっていた。ところがこの演奏を引き受けたことで、彼女はその仕事を断られてしまう。村上は淡々と事実をふり返るが、おそらく内心では、彼女ほどの実績を持つ人間が正当に評価されていないという憤りを感じているに違いない。

モア・リポートnow(1)性を語る33人の女性の現実

1980年・1981年に実施された「モア・リポート」の第二弾。1987年に実施されたアンケートには、13~61歳の1987人から回答が寄せられた。質問項目は47件と、前回よりは多いかな。影響を受けたものについて「モア・リポート」をあげる人をちらほらを見かけたのは、それだけ「モア・リポート」での質問項目が、社会に与えた影響が大きかったということなのだろうか。前回同様周囲の無理解、夫のSEXに不満を持つ女性が多数。第1回アンケートでも思ったが、女性も普通にオナニーをするのだな。それで普通に快楽を得ている人が多数いることを、世の男性はどれほど知っているのだろうか。この本を読んだあとに街中を闊歩している「キャリア女性」の姿を見ると、人知れずオナニーをしているのか?と邪な創造をしてしまう。こんな私は変態だろうか?「自分はお金のために結婚した」という女性が登場したのも、時代を感じさせる。====

経済学がわかる

1990年代~2000年代初頭に賭けて刊行された「AERAムック わかるシリーズ」の第1巻。折に触れて何度も何度も読み返しているが、読むたびに新しい知見を得られる本はそうそうない。この本はそんな一冊である。そして何度読み返しても最初に来る感想は「経済って、やっぱりわかりにくい」ということ。わかりにくいのも当然、現代経済学で頻繁に使われている言葉の大部分は、物理学で使われる用語が多いのだそうだ。そう考えれば現代経済の理論の多くも、物理と密接な関係がある数学の理論を使って分析される事象が多いことに納得できるだろう。こうなると経済学は「文系」?それとも「理系」?いいえ「文系」も「理系」もどちらからでもアプローチが可能な、立派な学際学であると考えただけでも、どこか胸がわくわくしませんか?今から20年前の第一線の経済学者が何を考えていたかを知りたい人にはお勧めしたい。もっともこの一冊で「経済学がわかる」ようにはならないのがつらいが(苦笑)

声優魂

声優界の大御所・大塚明夫が声優業界の現状及び、声優志望者に対する覚悟があるのかどうかを語った書。「声優だけはやめておけ」というキャッチコピーや、本書の中で延々と述べられる、自慢話が混じった説教にむかっと来る人も多いだろう。しかしここは目をつぶって30年以上にわたり、この業界で悪戦苦闘してきた彼の話にじっくりと耳を傾けて欲しい。この業界は「ハイリスク・ローリターン」であり、それ故腹が据わった、覚悟を持った人間以外は絶対のぞいてはいけない業界である事がわかるだろう。逆の見方をすれば、安直に対した努力をしないでスターになりたいと思っている「若手声優」や「自称『声優』」「声優の卵」に対する苦言と諫言が混じった一冊ともとれる。そして忘れてはならないのは「声優」も「俳優」なのだということ。「他人」を演じるということは、生半可な覚悟ではできないということなのだ。タイトルこそ「声優」という名がついているが、この本は一種の哲学論であり、人生論でもあるともいえる。本気で声優を目指したいのであれば、彼が吐く魂のこもった言葉の数々に耳を傾けて欲しい。

時空(とき)の旅人ーとらわれたスクールバスー(上巻)

日本を代表するSF作家眉村卓が1981~83年に発表した「とらわれたスクールバス」を、1986年にアニメ化する際に改題して再発行した作品。サイトに掲載されている写真は「ハルキ文庫」から発行された書籍だが、私が今手元にあるのは1980年代に角川文庫から発行された、萩尾望都がキャラクターデザインした表紙である。奥付を見ると「昭和61年発行」という懐かしい日付が。そう、この本はあの悪名高い「消費税」というのが存在しなかった時代に私が購入した本なのだ~…などと感興に浸っている場合じゃないなw

物語は22世紀からやってきたという少年が、主人公たちが通う学校のスクールバスにあやしげな装置を取り付け、これを操作するところからはじまる。彼はあることで当局から追われており、戦国時代に逃れるのだという。たまたまバスに乗り合わせていた生徒たちは少年の不遜な物言いに反発を覚えるが、彼と一緒に現代→戦時中→昭和15年→幕末と時間旅行をするうちに、奇妙な連帯感が目覚める。上巻に出てくる時代は、現代でいえば「空気を読まない人間は仲間はずれにするぞ」という雰囲気が強かった時代だが、これは少年が過去に逃げようとする原因である。さて、その理由とは?昭和15年からの時間旅行は、「危険思想の持ち主」として当局から指弾されていた社会学者が、彼らの指南役として加わる。彼らの時間旅行の行方はいかに?

モア・リポートnow(2)女と男 愛とセックスの関係

3分冊で文庫本化された「モア・リポートnow」の第二弾。前回のアンケートから7年経つが、夫・恋人のSEXについての不満は尽きることがない。「夫とのSEXより、それ以外との男性とのセックスの方が燃えるし気持ちがいい」という意見がある一方で、愛情に裏付けされたセックスを求める女性の声が目立つようになってきたこと。そして前回はわりと興味本位でセックスの話題を取り上げたが、今回のアンケートでは、社会学的な視座から「男と女」「愛とSEXの関係」を考察しようという視点が見られること。その心意気は立派だとは思うが、見方によっては編集死の主観的な視点が混ざっていると思われるところも見られる。あなたはSEXに「愛情は必要」だと思いますか?因みに、管理人は別に愛情がなくてもSEXはできると思っているは。理由は、「愛」だけでは生活が成り立たないと思っているから。こんな私は異常だろうか?

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2015年9月の読書リスト

国民の猛烈な抵抗を押し切り、とうとう希代の悪法「安保法案」は成立してしまった。

与党はこの法案の成立のために、これまで丁寧に積み重ねてきた、国会内での管領や必要事項を無視するという暴挙。SEALDsを中止とした反対派も成立間際まで反対の声を上げつつけた。しかし「8.30」デモに驚愕した官邸サイドは、警察当局に圧力をかけて、デモ隊が国会前の道路を占領しないように警察車両を配備した。当然のことながら、当局の対応に反対の怒りのボルテージは高まる一方である。

それにしても、野党のだらしのないことよ。安保法案の採決に先だって行われた、内閣不信任案におけるフィリバスターは2時間以上に及んだが、所轄大臣の問責決議案は結局提出せず。参議院に至っては、巨大与党によってフィリバスターは阻止され、ならば牛歩戦術をとればいいのにそれもしない。山本太郎が一人律儀に牛歩を実行し、閣僚席及び自民党議員団の席に向かって、嫌みたらしく喪服姿でお焼香のパフォーマンスをやったのみ。彼は反対票を投じる際

「組織票のために政治をするのか!良心は痛まないのか!」

と叫んでも自民党議員団はこれを無視。野党議員の「憲法違反」という叫び声が空しく響く中、法案は成立してしまった。

先週末で国会が閉会したため、現在の政治報道は休戦モードが漂う。おそらく政権幹部は「人の噂はなんとやら」ではないが、しばらくしたら国民の怒りは静まると高をくくっているに違いない。国民の怒りが本当に収まったのかどうかは、11月に開催される予定の臨時国会が開会するときにわかるだろう。

それでは、先月読んだ本の紹介である。

 

愛国の作法 (朝日新書)愛国の作法 (朝日新書)

読了日:9月4日 著者:姜尚中
モア・リポート 女たちの生と性/新しいセクシュアリティを求めて (集英社文庫)モア・リポート 女たちの生と性/新しいセクシュアリティを求めて (集英社文庫)

読了日:9月10日 著者:
新装版 なんとなく、クリスタル (河出文庫)新装版 なんとなく、クリスタル (河出文庫)

読了日:9月14日 著者:田中康夫
映画時評2009-2011映画時評2009-2011

読了日:9月24日 著者:蓮實重彦

愛国の作法

この本が発行されたのは、足かけ5年にわたった小泉政権が退陣し安倍内閣(第一次)が発足した時代である。小泉元首相は2005年の終戦記念日に靖国神社に公式参拝し、安倍総理が「美しき国へ」という著書を発行するなど、世間は右傾化の雰囲気が漂っていた。本書はその雰囲気に抗うかのごとく出版されたものである。この本の一番の難点は、その難解な文章にある。問題点を指摘しようという意欲は買うが、表現がわかりにくくて何が言いたいのかわからないところがある。読みこなすには、政治思想史や哲学、日本近代史・現代史の知識がないと、理解するのは難しいだろう。====

モア・リポートー女たちのあたらしい生と性

高級女性誌「MORE」編集部が、1980~1881年に行ったアンケートを基に発行された単行本の文庫化。単行本発行時のキャッチコピーは「今、女たちが自らの口で『性』を語りはじめた」というものだったが、その内容の生々しさは、当時の出版界に大きな衝撃を与えた。というのも、このアンケートを実施した「MORE」は「ファッション雑誌」で、そのような特集を載せるとは思われていなかったからである。

その内容は、今呼んでみても本当に生々しい。一読して感じることは、男性がいかに女性の身体のことを理解していないか、ということ。そして「SEX」というのは汚らわしいものではなく、男と女のコミュニケーションの一種として捉えて欲しいと思っている女性が、思っていたよりも多いということである。あれから30数年経ち、世間のSEXに対する認識はかなり変わったと思っている。そして、勇気を出してこのアンケートに協力してくれた女性たちに感謝したい。

なお、この本については別に記事を書いたので、詳しくはこちらを参照してください。

なんとなく、クリスタル

「軽薄な作家が、軽薄な学生のことを書いた小説。何でこんな小説が『芥川賞』の候補になったのか、訳がわからない」それがこの本を読み終えた第一印象だった。一流大学に通う、セレブな階層に所属する女子大生が、誰もがうらやむような生活を送る様子を描く小説。格差社会の現代で、こんな小説を発表する作家がいたら、周囲から総スカンを食らうことは確実である。ところが、作者のあとがきを読んだとたん、その印象は一変した。彼によれば、自分で読みたい青春小説を書きたかったのだという。今まで彼が読んできた「青春小説」は、現代の大学生の実態とはあまりにもかけ離れていた。そのことに違和感を覚えた彼は、それだったら自分で、今の大学生が何を考え、どう思っているのかをみんなに知ってもらいたかったのだ。そういう意味では、この作品は’80年代を代表する小説といえるかも知れない。

映画時評 2009-2011

東京大学第26代総長にして、映画評論関係者から「希代の映画アジテーター」といわれる映画・文芸評論家蓮實重彦氏。本著は文芸誌「群像」に掲載された映画評論約40本、映画に関するエッセイ、そして立教大学での教え子である映画監督・青山真治とのインタビューで構成されている。深い知性と鋭い視点、そして豊かな教養から生み出される独特の文体は、一見するとやさしそうに見えるために、他の人間からはまねしやすい。しかしこの本を通読してみるとわかるように、一文一文がやたらと長いその文体は理解するのは難しく、読み手に高い知性と深い教養、そして広範な視点を要求する。取り上げられる話題は、映画の裏話だけに止まらず高度な撮影技法まで幅広く、さらにその技法がどんな意味を持つのか、どんな背景があるのかを語る。この本にも書いているが、彼は一生かかっても観られないほどの映画DVDを持ち、さらにBSで放映された映画まで録画しているというから、ここまでくると「マニア」というより「中毒」と言っていいほどである。そこには、映画に対する彼の深い愛が垣間見える。この本を読んで、彼の専門である文藝評論も読んでみたくなった。そこでは、どんな思考が展開されているのか興味がある。

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